Matsumura 松村組

2020.06.29

基礎工事の工期10%の短縮・コスト10%の削減が可能に

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ソイルセメント改良体工法(PSPⅡ工法)として建築技術性能証明を改定

青木あすなろ建設、安藤ハザマ、奥村組、鴻池組、五洋建設、鉄建建設、戸田建設、西松建設、松村組の9社は、2003年に共同開発したソイルセメント改良体(PSP)工法を、PSPⅡ工法として2020年3月25日付で(一財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明を改定しました。

今回の改定で、PSP体(ソイルセメント改良体内に鉄骨が挿入された構造体)に常時あるいは地震時の押込み荷重が作用する場合に加えて、地震時に引抜き荷重が作用する建物に対しても適用できるように設計・施工法を確立することで、適用の拡大を実現しました。

1.開発の背景

従来、ソイルセメント壁※1は、地下掘削工事の際に仮設の山留め壁として建物の外周部に用いられるのみで、建物を支持するためには通常の杭が必要でしたが、これを本設構造として利用できれば建物の外周部の杭を削減することが可能となり、建設資材の削減が図れます。

そこで、共同開発会社9社は、ソイルセメント壁の性能を向上させることで、これを本設の地盤改良体として利用するPSP工法を2003年に開発し、建築技術性能証明を取得して適用を推進してきました。

一方、押込み荷重に対して直接基礎で支持できる建物においても、塔状比の大きい中低層建物では、地震時に建物基礎に大きな引抜き荷重が作用する例があり、引抜き抵抗のための杭や本設地盤アンカーを別に構築したり、あるいは掘削深さを大きくして基礎底に厚いコンクリートを打設してその重量で引抜き荷重に抵抗しています。このような例に対してPSP工法を適用できれば建設資材の削減が可能ですが、PSP体の引抜き抵抗に関する知見が少なかったことから、個別に詳細な検討が必要になり、設計時に多大な労力を要していました。

2.技術の概要

本工法は、ソイルセメント壁の性能を向上させ、厳密な施工管理、品質管理により、建物を支持できる本設の構造体として利用する技術です。

規定の削孔速度や撹拌回数で、セメントミルクを注入しながら撹拌混合して要求性能を満足するソイルセメント改良体※2を造成し、その中に建物の荷重を伝えるための鉄骨を挿入します(図1)。

建物の押込み荷重は鉄骨に伝わった後、ソイルセメントと鉄骨の付着力および先端に配置したシアコネクタ(頭付きスタッド)の抵抗力によりソイルセメントへ、さらにソイルセメント周面あるいは先端の地盤に伝達されます。一方、建物の引抜き荷重は、鉄骨に伝わった後、ソイルセメントと鉄骨の付着力によりソイルセメントへ、さらに周辺地盤に伝達されます(図2)。

3.技術の効果

今回、径が650mmの実大PSP体に対して引抜き試験を行い、地震時の引抜き荷重に対する構造性能を確認しました(写真1)。また、ソイルセメント改良体の施工試験を行い、ソイルセメントの均質性や強度など、引抜き荷重が作用する場合の要求仕様に対して、所定の品質が確保できることを確認しました。これらの結果から、従来の押込み荷重に対する設計に加えて、引抜き荷重に対しても設計できるように設計手法・施工方法を確立し、(一財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明を改定しました。

地震時の引抜き荷重が作用する地上9階、地下1階の建物に本工法を適用した場合、地盤アンカーを設置して地震時の引抜き荷重に抵抗させる方法に比べ、工期を10%程度短縮、コストは10%程度削減となります。

4.今後について

共同開発会社9社では、本工法の実物件への適用を図り、基礎工事の一層の合理化、環境負荷の低減を進めていく予定です。

※1 ソイルセメント壁:仮設の山留め壁として柱状あるいは連続壁の形状をなしているソイルセメント
※2 ソイルセメント改良体:本設の構造体として利用するために、性能を向上させた柱状あるいは連続壁の形状をなしているソイルセメント

図1 工法概念図(PSP体が山留め壁位置に配置された場合)

(左)押込み荷重を支持する場合の例/(右)引抜き荷重にのみ抵抗させる場合の例

図2 荷重伝達の模式図

(左)押込み荷重に対する適用時/(右)引抜き荷重に対する適用時
写真1 構造性能を確認するための載荷試験状況